視力低下・視野障害・複視

視覚について

視覚は、眼に入った光(情報)を感知して色や形、動きや奥行きを判断する感覚です。視覚経路は眼球の網膜から始まり、視神経・視交叉・視索・外側膝状体・視放線を通って後頭葉に至ります。

この経路のどこかに異常が生じることで視力の低下や視野の障害(見える範囲が狭くなる)を生じます。

視力低下、視野障害

年齢を重ねると視力が低下して見えにくくなることが一般的です。

しかし、白内障や緑内障、網膜剥離と言った目の病気の他に、脳の病気でも視力低下や視野障害をきたすことがあり、代表的な疾患として脳腫瘍や下垂体内分泌腫瘍による視神経の圧迫や脳卒中が挙げられます。まれに眼窩内腫瘍によって眼球突出を伴う視力低下をきたすこともあります。

下垂体神経内分泌腫瘍の概要

下垂体神経内分泌腫瘍とは、下垂体前葉から発生する良性腫瘍で、原発性脳腫瘍の約20%を占めます。臨床の現場では下垂体腺腫と呼ばれることがまだ多いのですが、2022年のWHO組織分類によって「下垂体神経内分泌腫瘍」へ名称が変更されました。

上述した通りほとんどが良性ですが、発生母地である下垂体の機能的特徴や解剖学的特徴から様々な症状を引き起こします。

下垂体神経内分泌腫瘍の概要

特徴1

下垂体は全身における内分泌腺機能(ホルモン)の調節役を担う器官です。腫瘍によるホルモン分泌低下または過剰産生によって図のような症状を引き起こします。

特徴1

特徴2

下垂体の上方には視神経が、側方には眼球運動を司る神経(動眼神経、滑車神経、外転神経)が存在します。これらが腫瘍によって圧迫されると、視力や視野の異常、複視(物が二重に見える)などの症状が起こります。

特徴2

下垂体部に発生する腫瘍のほとんどは下垂体神経内分泌腫瘍ですが、その他にラトケ嚢胞、胚細胞腫瘍、髄膜腫、下垂体炎といった様々な疾患があげられます。
その多くがMRIで描出可能ですが、その画像所見は多彩であり、下垂体が大きく見えるが正常範囲の場合もあります(下垂体の生理的腫大)。画像診断には豊富な知識が必要です。

脳腫瘍について

下垂体にできる病気

下垂体に発生する疾患は大きく分けて以下の2つに分類されます。

  1. 腫瘍性病変:下垂体神経内分泌腫瘍、頭蓋咽頭腫、髄膜腫
  2. 炎症・嚢胞性病変:下垂体炎、ラトケ嚢胞、くも膜嚢胞

ラトケ嚢胞も頭蓋咽頭種も胎生期の組織の遺残からできる疾患です。

下垂体にできる病気
  • ラトケ嚢胞は、下垂体の中間葉に発生することが多く、大部分は無症候性ですが、頭痛(発症時期が明瞭で、発作性非拍動性の前頭部痛)の原因となったり、嚢胞増大による視力視野障害や内分泌障害をきたすことがあります。
  • 頭蓋咽頭腫は小児、成人の両者に発生する良性腫瘍です。下垂体柄を中心に発育することが多く、そのため視神経圧迫による視力視野障害や内分泌障害、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。

複視

ものがダブって二重に見えることを複視といいます。

一般的に複視は眼球運動の障害による両眼の動きがうまく連動しなくなった場合に生じます(両眼性複視)。片方の眼だけを開けて複視が生じる場合(単眼性複視)は眼科での検査が必要です。
両眼性複視では眼の動きをつかさどる脳神経や脳幹、眼筋の異常が原因となります。

眼を動かす神経と筋肉

眼を動かす神経と筋肉

6つの外眼筋(内直筋、外直筋、上直筋、下直筋、上斜筋、下斜筋)が3つの神経(動眼神経、滑車神経、外転神経)によって制御されています。
これらの神経や、その核、筋肉が障害されると左右の眼球運動のバランスが悪くなり、視線がズレて物がダブって見えるようになります。

代表的な疾患

代表的な疾患

瞳孔の左右差と眼球運動障害の原因

動眼神経は瞳孔と眼球運動の大部分を制御しており、動眼神経が障害されると(動眼神経麻痺)、①瞳孔散大②複視③眼瞼下垂(まぶたが下がる)が出現します。

また、動眼神経に支配されない外眼筋(外直筋、上斜筋)に引っ張られて、眼球は外側、下方へ偏位します(外斜視)。
動眼神経麻痺は糖尿病や高血圧によっても生じる可能性がありますが、この場合は瞳孔散大を伴いません。

未破裂脳動脈瘤について

未破裂脳動脈瘤について
未破裂脳動脈瘤について

動眼神経麻痺の原因として特に注意が必要なのは、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)によるものです。以下の症状が突然発症します。

  • 片方のまぶたが垂れる(眼瞼下垂)
  • ものが二重に見える(複視)
  • 片方の瞳孔が大きくなる(散瞳、瞳孔不同)

これらの症状は、脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こす「兆候、前兆」と考えられていますので、直ちに医療機関を受診する必要があります。

Photo by Toshihisa Ishil
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